分散型水道は、特定の集落や住宅単位で完結する小規模な浄水・供給システムです。分散型水道では、特定の集落や住宅単位で完結する小規模浄化施設を用いるため、災害時にも被害の局所化と迅速な復旧が可能となります。
近年、膜ろ過技術やIoTを活用した遠隔監視システムなどの技術革新により、小規模であっても安全な水供給が可能になっています。 2026年1月には、国土交通省が分散型水道の導入に向けた手引きを作成し、人口減少地域や給水人口100人以下の地域などを対象に、コスト削減や維持管理の容易性、災害対応能力を考慮して導入することを検討しています。
国土交通省が示す分散型システムは、単一の給水手法を指すものではなく、地域の条件や将来見通しに応じて、①小規模な浄水施設を設置して恒常的に給水を行う「小規模水道」、②浄水場等で処理した水を車両で運搬する「運搬給水(運搬送水)」、③各戸ごとに浄水を行う「各戸給水」といった方法を想定しています。
分散型水道と従来の集約型水道のベストミックスによる施設の最適配置を実現することが、今後の水道事業において重要であるとされています。
(出典:国土交通省「水道事業における分散型システムの導入手引き」)
日本の水道インフラは高度経済成長期に一斉整備されましたが、国交省等の公表資料によると、2026年時点で法定耐用年数を超えた老朽管路の割合は全国平均で約20%を超えており、更新が追いついていない状況です。
一方で、人口減少により水道使用量は年々低下し、地方自治体における水道事業の収入源である有収水量も減少傾向にあります。このため、従来の大規模集中型水道を維持することは財政的に困難となり、水道事業の持続可能性確保が喫緊の課題となっています。
令和6年1月の能登半島地震では、大規模集約型水道システムの復旧が遅れたことが報告されました。長距離管路は地震など災害時に破断しやすく、一箇所の被害が広範囲の断水につながるという構造的リスクを抱えています。こうした背景から、災害に強い分散型システムの導入が検討されるようになりました。
能登半島では、小規模分散型システムに使用できる可搬式浄水装置「アクアレスキュー」で周囲の川の水を原水として処理した水を、自衛隊が避難所に設置したお風呂の水や生活用水として活用いただきました。
兵庫県美方郡香美町の柤岡浄水場は、山間部の小規模集落を対象とした水道施設で、給水人口は200人未満、原水には湧水を利用し、平常時は安定した水質を保っていました。一方で、搬入路が狭く大型車両が進入できないことや、冬季の積雪による停電・アクセス制限など、設置・運用の両面で厳しい条件を抱えていました。こうした制約を踏まえ、大型設備による一括更新ではなく、小型ユニットを分散配置する分散型水道システムが採用されました。
▶ 分散型水道の導入事例(中山間地域・小規模集落/兵庫県香美町)
より小規模な簡易給水施設において、水質悪化への対応や導入前検証を含めて分散型水道を検討した事例については、ホワイトペーパーとして以下に詳しくまとめております。
北海道足寄町の奥足寄地区に位置する簡易給水施設は、給水戸数10戸未満、給水人口も数十人規模という極めて小規模な水道施設です。
原水には湧水を利用し、浄水方法は消毒のみという簡易な構成で運用されていましたが、融雪期や長雨時には水質が悪化し、アルミニウムや鉄、色度が水質基準を超過する事例が発生しました。
凝集沈殿池やろ過池などの大規模施設を新設することは、用地や事業費、維持管理体制の面から現実的ではありませんでした。そこで、限られた敷地内で設置可能かつ維持管理負担の少ない分散型水道として、可搬型の膜ろ過装置を用いた浄水システムが検討・導入されました。
導入に先立つ実験により、原水水質が悪化した場合でも安定して水質基準を満たすことが確認され、現在では少人数体制でも運用可能な分散型水道施設として機能しています。
従来の集中型水道は管路延長が長く、人口の少ない地域では住民一人あたりの管理コストが極端に高くなる傾向があります。分散型水道への移行により、管路の延長を最小化し、新たな浄水施設や管理運営体制を導入することによって、将来的な管路更新費用の削減と自治体財政の安定化が可能となります。また、地域特性に応じた柔軟な運営形態も検討されています。
分散型水道の導入は、コスト削減、維持管理の効率化、災害時レジリエンス向上、技術革新の実装など、多角的な課題解決策として注目されています。
アクアレスキューは自治体・水道事業体向けに多数の納入実績がございます。山間部や離島など狭小地での浄水装置の設置に困っている、いつか来る大規模災害に備えたい、といった課題・要望をお持ちの方は、ぜひ一度当社までお問い合わせください。